孤独にそっくり

開いている窓の前で立ち止まるな

『百年の孤独』の感想、というよりは僕の本の趣味嗜好

当然ですが、焼酎の「百年の孤独」の話ではなく、ガルシア=マルケス百年の孤独』の話です。

この作品は、ここの世界文学ランキングで堂々の1位を獲得していて、ものすごく期待して読みはじめました。

GWの最中に予定が全くなかった孤独な僕にはおあつらえ向きだろうと思って、この単行本の473ページの長編を2日でさくっと読んでしまいました。値段にして税込み3024円。ちなみに文学作品の単行本は初めて買ったと思います。

 

結論から言うと、とてもおもしろかったです!

ただ、語弊を生むかも知れませんが、期待したほどではありませんでした。とてもおもしろい本ではありましたが、再読はしないと思います。

理由について説明するのは難しいことですが、簡潔にいえば、僕が求めている本ではないからです。

たくさん本を読む人は、なぜ本を読むのでしょうか?知識を得たいとか、独自の視点を体験したいとか、ただの活字中毒とか、様々理由はあるでしょう。SFなら近未来に思いを馳せたいとか、ミステリーやサスペンスなら頭を働かせるのが楽しいとか、そんな感じでしょうか。僕はSFは多少読みますが、ミステリーやサスペンスは読まないので、想像です。それ町の歩鳥みたいに探偵脳になっちゃうんですかね。

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であるならば、こと物語、特に文学と呼ばれる分野の本をなぜ読むのか?

僕の場合に限っては、理由のひとつとして、そこに僕と同じような苦しみや悲しみを背負っている人間を見るために読んでいる気がします。内部からみた人間観察的な。

例えばドストエフスキイの『罪と罰』やヘッセの『デミアン』やモームの『人間の絆』やサリンジャーの『フラニーとズーイ』やアーヴィングの『ガープの世界』なんかがそうです。(それぞれ『郷愁』や『月と六ペンス』や『ライ麦畑でつかまえて』や『ホテル・ニューハンプシャー』でもいい。)

読みながら「そうそう!そうなんだよわかるわかる!」みたいな事を思っています。

言語化されている自分のかけらを集めているような、そんな気さえします。頭が単純なので、書かれていると自分もそうだと思い込んでいるだけかもしれませんが。

そうは言っても、有名どころに手を出して読んでいるうちに、読書そのものが楽しくなってきて、ちょっぴり活字中毒に傾きつつあるのかなと言った感じです。

興味の対象としては、人間の物語が多いですが、ポール・オースターみたいなポモ文学も読みますし、カフカブッツァーティカルヴィーノみたいなのも読みます。一時期カミュも好きで読んでいましたが、いつの間にか飽きてしまいました。『ペスト』は読まないとダメだな。あと『存在の耐えられない軽さ』『不滅』しか読んでいませんが、クンデラはとっても好きです。

それに一番好きだと思っている作家はカートヴォネガットなので、それはまたどうなんだろうという感じです。

ただ、常に言えることは、作品にまるで自分が考えていることがそっくり書かれていると思うような体験をするような作品は、何か胸にぐっと突き刺さるものがあるということです。

 

ガルシア=マルケスの話に戻りますが、前に『予告された殺人の記録』を読んだことがあります。異常なまでの緻密さで描かれていて、読み終えた後に嘆息しましたが、それは別の喜びによるものなので、置いておくとして、今回読んだ『百年の孤独』は帯に書かれている言葉が「愛は、誰を救えるのだろうか?孤独という、あの深淵から……。」となっています。きっと魂が揺さぶられるようなものすごい物語なんだろうな~と期待して読み始めたら、なんか思っていたのと違いました。

百年の孤独とは、ブエンディア一族のそれぞれが抱えている孤独のことです。彼らは常に孤独を抱え、ある人は狂人になったり、ある人は死んでしまったりします。その様は、まさに物語の奔流と言った感じでした。

前に読んだ『緑の家』も似た感じでしたが、筋もわかりやすく、ユーモアのセンスもずば抜けている。ただ、多くの登場人物は、じっと押し黙っていて、その様子を外から眺めるしかない。この物語を読んでいると、顔に深く刻まれた影をも見ることが出来ますが、そこに何があるかを知ることは出来ない。本来、孤独というのはそういうものなのでしょう。

やはり、『カラマーゾフの兄弟』を読んでいるときのような没入感は得られませんね。ああいった「心理学」は西洋的なものなのでしょうか。だからといって、スタンダールの『赤と黒』やフローベールの『ボヴァリー夫人』は面白さがイマイチわからないので、おとなしく好きな作家の作品を消化することにします。

好き勝手なことを言ってきましたが、マジックリアリズムも好きですし、ガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』も合わせて買っているので、楽しみにしています。